Physics Lab. 2018 ブログ

Physics Lab. 2018 ブログ

東京大学理学部物理学科有志による、第91回五月祭企画「Physics Lab. 2018」の公式ブログです。各班が扱うテーマの説明や、準備の様子をお届けします。

ブラックホールの作り方

 

初めまして。宇宙班班長の川口です。

今日はなんと!、皆さんにブラックホールの作り方をいくつか紹介します。(※この中のどれかを宇宙班が実際にやります)

 

 

 

本物のブラックホール

〈道具〉

 

 

〈材料〉

 

  • 時空

 

〈作り方〉

 

  1. まずどこか広い土地に粒子加速器を建設します。もし場所がなければ、いまある加速器を貸してもらいましょう。日本だとつくば市のSuperKEKBがいいかもしれません。
  2. 加速器で加速させた高エネルギー粒子を衝突させます。
  3. 衝突点のあたりで時空がゆがんでブラックホールが出来るかも。f:id:physlab2018:20180414225637j:plain

(写真:wikipedia)

 

〈コツ・ポイント〉

 

  • まだこの方法でブラックホールを作れた人はいません。LHC程度のエネルギーで作れたとすると、余剰次元が存在することになります。えらいことです。

 

 

超流体の擬似*1ブラックホール

 

〈道具〉

 

  • ラバール管
  • ポンプ

 

〈材料〉

 

 

 

〈作り方〉

 

  1. ラバール管にポンプで超流動ヘリウムを流し込みます。
  2. 超流動ヘリウムを流す速度をうまく調整して、ラバール管のへこんでいる部分で速度がちょうど音速になるようにします。そうすると上流では亜音速流(流速が音速よりも遅い流れ)、下流では超音速流(流速が音速よりも速い流れ)になります。
  3. そのへこんでいる部分がブラックホールのシュワルツシルド半径に対応します。超音速流の領域がブラックホールの内側です。超音速領域で発生させた音波が亜音速領域に達することがないからです。ブラックホールと似てるでしょ。

f:id:physlab2018:20180414230241p:plain

(写真:wikipedia)

 

〈コツ・ポイント〉

 

  • まだ超流体では実験的に実現されていません。(数値シミュレーションではおもしろい結果がいくつか示されていますが。)
  • ボーズアインシュタイン凝縮原子気体で、この種のブラックホールを作り、ホーキング輻射を観測したと主張する人もいます。すごいですね。

 

 

跳水の擬似ブラックホール

 

〈道具〉

 

  • 液体の出る蛇口
  • 跳水を作る板

 

〈材料〉

 

  • 水などの普通の液体

 

〈作り方〉

 

  1. 蛇口から液体を板に向けて流す。面倒なら台所か、お手洗いで蛇口を捻ろう。
  2. 跳水が出来て、跳水の水の深さが不連続になっている部分がシュワルツシルド半径に対応している気がする。

f:id:physlab2018:20180414230448j:plain

(写真:これが跳水です。見たことありますよね。水でやっているのできれいに出来ていない。)

〈コツ・ポイント〉

 

  • 板は水平に置こう!
  • 使う液体は水だと跳水がきれいに出来ないので、粘性を上げるとよい。(高分子量の分子を混ぜよう)
  • 跳水の水深が変わるところがシュワルツシルド半径に対応することを宇宙班は調べています。どのように調べるかは皆さんで考えてみてください。五月祭当日はこの調べ方や調べた結果をお見せします。

 

と、様々なブラックホールを作ることが出来ますね。皆さんも作ってみてはいかがでしょうか。

*1:擬似です。時空を歪ませるわけではありません。しかし歪んだ時空上の粒子の運動と非一様な流体での波の伝播は同じ形の方程式で記述できます。ということはブラックホールを流体で再現できるかもしれない、ということです。作り方を読めばなんとなく似ている気がしますよね。本物のブラックホールでは実験のしようがないですから、流体で作った擬似ブラックホールについていろいろ実験して、本物のブラックホールについて予言されている性質や振る舞いが現れていないかを調べる研究が実際にあります。詳しく知りたい方は「analog blackhole」、「analog blackhole Unruh」とかで調べてみてください。宇宙班が跳水でやっている実験もこのような擬似ブラックホールの研究の一端と言えるでしょう。